3000万円特別控除と住宅ローン控除の賢い使い分け

住宅の買い替えを検討中の方にとって、税金対策は重要な課題です。
特に、3000万円特別控除と住宅ローン控除は、大きな金額が絡むため、どちらを選択すべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
どちらの控除が自身の状況に適しているのか、そして買い替え時の手続きについて、しっかりと理解しておくことが重要です。
このガイドでは、それぞれの控除の特徴や計算方法を丁寧に説明し、買い替え時の賢い選択を支援します。
税制改正にも注意が必要なため、最新の情報も踏まえて解説を進めていきます。
3000万円特別控除の特徴
適用条件とは
3000万円特別控除は、自宅を売却した際に適用できる特例です。
適用を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず、売却した住宅が所有名義であること、そして売却先が第三者であることが必須です。
また、売却した住宅に実際に居住していたこと、売却した年の1月2日以降に住まなくなったことが条件となります。
住宅の一部を事業用などに使用していた場合、居住部分のみを対象に控除が適用されます。
さらに、重要な点として、売却した住宅について、令和2年分から令和4年分の所得税の申告で住宅ローン控除や認定(長期優良)住宅新築等特別税額控除の適用を受けていないことが必要です。
また、令和3年分から令和4年分の所得税の申告で、居住用財産の売却した場合の特例の適用を受けていないことも条件となります。
これらの条件を満たしていない場合、3000万円特別控除の適用を受けることはできません。
控除額の計算方法
控除額は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得から、最高3000万円を控除できます。
譲渡所得の計算は「売却価格-(取得費+譲渡費用)」で行います。
例えば、売却価格が5000万円、取得費が1500万円、譲渡費用が200万円の場合、譲渡所得は3300万円となります。
この場合、3000万円が控除され、課税対象となる譲渡所得は300万円となります。
課税される税額は、所得税、復興特別所得税、住民税の合計税率によって変動します。
税率は、自宅の所有期間が5年以下か5年超かで異なり、5年を超える長期譲渡所得の場合は税率が低くなります。
長期譲渡所得(5年超)の税率は、軽減税率の特例が適用される場合とされない場合で異なります。
軽減税率の特例が適用される場合は、6000万円以下の部分に対する税率が14.21%となります。
特例が適用されない場合は、税率は20.315%となります。
5年以下の短期譲渡所得の場合は税率は39.63%となります。
適用事例
Aさんが20年前に1500万円で購入した自宅を、2021年6月に5000万円で売却したとします。
譲渡費用は200万円です。
この場合、譲渡所得は3300万円です。
所有期間が20年を超えているため長期譲渡所得に該当し、軽減税率の特例が適用されると仮定します。
3000万円特別控除を適用すると、課税対象となる譲渡所得は300万円となり、税額は約4万3千円(300万円×14.21%)となります。
軽減税率の特例が適用されない場合、税額は約670万円(3300万円×20.315%)となります。
一方、3000万円特別控除を適用しない場合は、税額は約670万円となります。
この例では、3000万円特別控除の適用によって大幅な税金軽減が実現しています。
しかし、譲渡所得が小さい場合は、3000万円特別控除のメリットは小さくなります。
住宅ローン控除の特徴
適用条件とは
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して自宅を取得し、一定の条件を満たした場合に適用される制度です。
適用条件には、住宅の種類や取得年、家族構成などが影響します。
住宅ローンの控除額は、年末の借入金残高の一定割合(現在は1%)です。
控除期間は原則10年間ですが、13年間の特例もあります。
また、消費税率が8%または10%が適用される住宅の場合、年末の借入金残高の上限は4000万円(認定長期優良住宅であれば5000万円)です。
消費税が課税されないケースでは2000万円が上限となり、控除額の上限は毎年20万円となります。
住宅ローン控除を受けるには、その住宅に実際に住み始めた年とその前年、前々年に居住用3000万円控除を受けていないことが必要です。
また、住み始めた年の翌年以後3年以内に従前の自宅を売却し、居住用3000万円控除を受けている場合も適用できません。
控除額の計算方法
控除額は、年末の借入金残高の1%です。
ただし、本人が負担する所得税・住民税が上限となります。
Aさんが4000万円の住宅ローンを借り入れた場合、2021年末の借入金残高が約3912万円だとすると、控除額は約39万1200円(3912万円×1%)となります。
毎年の年末残高に基づいて控除額が計算され、10年間(または13年間)の合計控除額が算出されます。
返済期間が10年より短くなるような繰上げ返済を行うと、控除期間が短くなる可能性がある点には注意が必要です。
適用事例
前述のAさんの例では、住宅ローン控除の10年間の合計控除額は約309万円でした。
これは、3000万円特別控除による税金軽減額(約627万円)と比較して少ない金額です。
しかし、譲渡益が少ない場合や、住宅ローンの金額が大きい場合は、住宅ローン控除の方が有利になる可能性もあります。
それぞれのケースでシミュレーションを行うことが重要です。
控除率の見直しも検討されているため、将来的な控除額の変更にも注意が必要です。
3000万円控除と住宅ローン控除の併用
併用は可能か
3000万円特別控除と住宅ローン控除は、併用できません。
どちらか一方を選択する必要があります。
これは、住宅ローン控除の要件に、居住用3000万円控除の適用状況に関する規定があるためです。
新たな住宅に住み始めた年とその前2年、後3年の間に、従前の自宅を売却し居住用3000万円控除を受けている場合は、住宅ローン控除が適用されません。
それぞれの特徴比較
3000万円特別控除は、自宅売却時の譲渡所得を軽減するのに対し、住宅ローン控除は、住宅取得時の住宅ローン負担を軽減します。
どちらが有利かは、売却益の額、住宅ローンの額、所有期間、税率など、様々な要因によって異なります。
そのため、個々の状況に合わせて、それぞれの控除額をシミュレーションし比較検討することが重要です。
税理士などの専門家への相談も有効です。
住宅買い替え時の控除選択
どちらの控除が有利か
どちらの控除が有利かは、個々の状況によって大きく異なります。
売却益が大きく、所有期間が長い場合は、3000万円特別控除が有利となる可能性が高いです。
一方、住宅ローンの金額が大きく、所有期間が短い場合は、住宅ローン控除が有利となる可能性があります。
それぞれの控除のシミュレーションを行い、比較検討する必要があります。
特に、売却と取得の時期が異なる場合は、慎重なシミュレーションと検討が必要です。
申告済みの場合の修正
住宅ローン控除を適用した後、後に従前の自宅を売却し、居住用3000万円控除の方が有利だったと判明した場合、修正申告で対応できます。
逆に、3000万円特別控除を適用した後、住宅ローン控除に切り替えることはできません。
税制は変更される可能性があるため、専門家への相談が重要です。
確定申告期限までに必要な手続きを行いましょう。
まとめ
住宅の買い替えを検討する際には、3000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらが有利かを慎重に検討することが重要です。
それぞれの控除の特徴、適用条件、計算方法を理解し、自身の状況に最適な控除を選択しましょう。
売却益や住宅ローンの額、所有期間、税率などを考慮した上で、シミュレーションを行い、必要であれば税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
税制改正にも注意を払い、最新の情報に基づいて判断することが大切です。
申告済みの場合の修正申告についても、事前に確認しておきましょう。